私の志集 300円、を買いました。新宿駅西口に立ち尽くす、あの女性から。初めてあの人に気づいたのは学生のとき。もう20年くらい前ではないかと思います。正直いって、気味が悪かった。関わってはいけない雰囲気を感じました。ほとんどの人はそう思っているでしょう。

久々に新宿に行った一週間前のこと、またあの女性の横を通ったとき、失礼かと思いながらも顔をよく見たら、実は結構きれいな人なのではないかと感じました。50歳近いのですが、少なくとも醜い歳のとりかたはしていない。

それで興味をもち調べてみると、2ちゃんねるにスレッドがありファンもそこそこいることや、彼女は3代目で、25年くらい前から立っていること、初代は30歳離れた彼女の夫で、終戦直後から立っていたことなどがわかりました。

どんな事情で、どんな運命の巡り合わせで、あのような苦行ともいえることを始め、20年以上も続けているのか、気になって仕方がありません。今度新宿に行ったときは、必ず買おうと心に決めました。

昨夜再び新宿を訪れ彼女を視認したとき、一瞬の迷いはありましたが、近づいて思いきって声をかけると、意外と心穏やかに買うことができました。

一秒未満の短い間あわせたその瞳には狂気はありませんでした。コンビニ店員のような乾いた目もしていないし、ファーストフード店員のような作り笑いもありません。客に対する媚もなく、かといって事務的でもない、少しだけの、自然な笑顔。言葉は交わさなかったけど、それで充分です。

志集を開くと、手書きのきれいな字。きれいというより丁寧。一文字一文字を刻むように書き上げる姿が目に浮かびます。正直いって、詩の中身の良し悪しはわかりませんでしたが、また買い求めそうな気がします。