『ドラッカーと会計の話をしよう』 林 總(はやし あつむ)

小説仕立ての会計本。イタリアンレストランを起業して3年、経営に行き詰まり店を手放そうとする42歳男。売買交渉に向かう飛行機の中で隣り合わせた初老の男性から会計のレクチャーを受け、店の自力再生を決心する。

・儲けと利益は違う。利益はいくらでも操作できるが、儲けは恣意的にいじれない。収支計算と利益計算のタイミングは異なる。 ・利益のみを追うと、会社の存続を危うくする。黒字でも預金は底をつく。 ・利益は会社が新たに作り出した価値。その機能は3つ。事業活動の評価基準、リスクのカバー、資金調達。 ・儲け = キャッシュフロー。キャッシュフローの元データは預金通帳。 ・会計は最古の情報システム。陳腐化している。期間利益計算は役に立たないが、社会制度が求めるものであるから出す。 ・コストの90%は価値を生まない。成果を出すには何をすべきか、論理的に考え抜く。勝負は戦う前に決まる。 ・商品のライフサイクルを把握して戦略的に組み合わせる。今日の主力製品は遠からず昨日の主力製品になる。明日の主力製品は今日の主力製品となる。そして開発製品の一部を明日の主力製品に成長させる。

学び、気づきの多い良書だが、ドラッカーの言葉の引用から解放されれば、さらに読ませる本になっていただろう。この著者は、利益と儲けの違いを数ある自著で繰り返し説いている。利益中心の頭になっている我々にとって、キャッシュフロー中心の頭に移行するのは難しい。黒字ではなく、儲けを目指さなくてはと、改めて思う。