「みかん書院」という出版社をつくりました。IT系技術書の翻訳出版を柱にしています。オフィスは自宅、社員もナシの、零細出版社です。最近はやりの電子書籍ではなく、紙で本を出します。少なくとも今のところは。

出版社を作ったと人に話すと、どうやら非現実的に聞こえるようで、なかなか理解してもらえません。お店を作ったとか、独立してシステムの受託開発を始めたというのと違い、ウケが悪いように思います。出版社とは存在するものであって、作るものではないという固定観念があるようです。

でも、出版社の立ち上げはとても簡単です。誰にでもできます。ただ、本屋さんの独立開業本コーナーにいっても『明日から始める出版社』みたいな本はなく、立ち上げ方のノウハウを集めるのに、やや手間がかかります。出版業界の人たちが門外不出のヒミツにしているわけでもなく、単に需要が無いから情報がまとまって存在しないだけです。直接教えを請いに行けば、みなさん親切にしてくださいます。

一方、出版社を継続させるのは、立ち上げよりも難易度が高いでしょう。みかん書院が3年後にも残っているかはわかりませんが、自分の器を超えて無茶をしなければ、そう簡単につぶれるものでもありません。そう信じているし、実際、継続する意思のある零細出版社はなかなか倒産しません。

インターネットの興隆とともに出版不況になり、年々市場が縮小し、改善する見込みもなく、講談社や集英社などの大手出版社が軒並み本業で利益を出せなくなっていますが、零細出版社はしぶといです。大手は不動産を持っているので、身を削りながらも、しばらくは倒産せず、零細は身の丈にあった事業を細々とやるので倒産しません。自転車操業している中堅出版社は、いつばたばたと倒れてもおかしくない状況のようですが。

とはいえ、紙から電子書籍への移行タイミングには気をつけないといけません。電子への転換期のどこかで、取次(本の問屋)の支払い能力に問題が生じるはずです。それが3年後なのか、10年後なのかは予測できませんが、紙本の売掛金が全額回収できなくても事業を継続できる程度の余裕は必要です。