NHKの吉田茂の連続ドラマを観た。彼は元外交官。太平洋戦争に負けた後に総理大臣になり、サンフランシスコ講和条約を結んで日本を独立国家へと導いた人物だ。ドラマの副題は「負けて勝つ、戦後を創った男」。

吉田は、いま、自分が求める成果は何かという目的を見失わない。敗戦直後は天皇陛下への戦争責任追及を避けるために、それ以外のあらゆることを、ぎりぎりの交渉を重ねながら譲り続けた。そしてその後は、GHQの支配から脱却し、日本を独立国家にするために、最後の最後でアメリカからの要求を受け入れた。ドラマの表現をそのまま信じるなら、日米安保条約は、日本が独立国になるための、アメリカとのバーター取引であった。後々大きな禍根を残すだろうと理解しつつ、講和条約を結んで独立国に復帰するためには、それ以外の策がなかった。

吉田に反対する者は大勢いたし、吉田自身も自分がやろうとしていることが正解なのかどうか、わからなかった。それでも、国内、国外の危うくて複雑な利害関係の焦点に立ながら、譲って譲って譲りまくって、独立を勝ち取った。8、9まで譲っても、自分がどうしても欲しい1を手に入れる、それが外交官だ、と吉田は言う。

目的さえ絞れていれば、その目的に沿った判断の誤りが少なくなり、行動にメリハリがつき、成果を得やすくなる。十分なリソースを持たないときに、あれも、これもと、複数の目的を追ってはいけない。それを学んだ良質なドラマだった。