楽天が出版取次に参入するというニュースが数日前に流れた。プレーヤーが増えて多様性が増すのはいいことだと思う。新規の取次なんて、倒産した取次の再建のような例を除けば、ここ3〜40年、無かったのではないか。

書店や出版業への参入は、比較的容易だ。いまどき小規模零細書店を開業する物好きは少ないだろうし、新規出版社は不利な条件を飲まされるという事実はあれども、出版業界から拒否されることはなく、その気になれば誰でも参入可能。

それを可能にしているのが取次を中心とする出版流通システム。日本の出版流通は、4000社の出版社と、2万店にせまる書店を、数十社の取次で結んでいる。数十社といっても、日販、トーハンの2社だけで70%を扱い、上位数社でほぼ全てともいえる寡占の世界。分野を絞るなど、特色ある取次でない限りは、取次に新規参入するには、多数の出版社、多数の書店と契約しなければならず、不可能に近い。

ところが楽天が取次に参入。これはすごい? でも、よく考えてみると、楽天だって取次(日販)から仕入れているただの書店。それって取次と呼べるのか。流通が一段階増えて、流通コストも増える。楽天は小規模書店よりいい条件で契約しているだろうけど、書店に宅配便で送るコストを捻出できるはずがない。結局、楽天から本を取る書店の取り分が減るだけではないか。読者は便利になるかもしれないけど、書店は手間の割に儲けが少ない。楽天の取次参入というのは、言葉だけ華やかで、中身は空っぽな気がする。

日本の出版流通って、現役で流通しているアイテムが100万種とも言われる超多品種少量生産の書籍や雑誌を、全国一律の定価で、1冊でも注文できるという、とんでもないシステム。今ならAmazonがあるけど、これを50年前に実現していた。そのかわり、透明性、柔軟性が低い。注文して届くまでに3週間とか、注文してもいつ届くのか予想できないとか、そもそも届くかどうかさえも誰もわからないとか、今日注文しても品切れと言われるけど、一ヶ月後に注文すると買えるかもしれないとか、もう、消費者にとっては不満がいっぱいのシステム。だから、大量の在庫と、正確な在庫情報を持って、この欠点を意識しないで済むようにしたAmazonが大人気なんだね。