UXとはおもてなしの心
スマホアプリの開発中、UXとは何かと問われて、戸惑いました。多くの人の合意が得られた定義というのは、まだ存在しません。しばらく考えて、それはおもてなしの心ではないかと考えるようになりました。実際に利用してくれる人のことを思い浮かべながら、どうすれば相手に喜んでもらえるのかを考え、行動すること、です。スマホアプリに限らず、飲食業でも、ホテルでも、人に贈り物をするのでも、お客さまを接待するのでも、友人付き合いでも、異性の気を引くのでも、基本は同じなのだろうなと思います。
iOSヒューマンインターフェースガイドラインは、iOSの世界の標準を作る、文化を作るものです。環境によって、どうおもてなしをすると喜んでもらえるのかが異なります。ある環境で、さまざまな制約にさらされながら、どのように振る舞えば皆が気持ちよく過ごせるかという試行が積み重なってできたものが、マナーとか、ガイドラインであると思います。少ないコストで高い満足度を生み出すためのものです。
人に会ったときに軽く会釈する文化もあれば、手を差し出して握手したりハグやキスをする文化もあります。紺やグレーのスーツを着て革靴を履くのが自然な会社もあれば、ユニクロを着てサンダルを履くのが自然な会社もあります。それらの標準から離れた行動をすると、コミュニケーションに余分なコストがかかります。iOS の世界では、iOSヒューマンインターフェイスガイドラインに沿って振る舞えば、他の人に違和感を与えることなく、自然な所作として無条件に受け入れてもらえます。
このガイドラインは、唯一無二の正解ということは決してないけれども、先人の経験を元にAppleが時間をかけて洗練させた文化なのだと思います。ガイドラインから離れたものを作ろうとする場合も、積み上げられてきた文化を尊重した上で、すべきものだろうと考えます。